腱鞘炎手首

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腱鞘炎で手首 が痛い!? どうしてこうなった?自宅でできる予防法は?

公開日
更新日

 
執筆:森 ジュンヤ(理学療法士、国立大学法人九州大学会員)
 
 
手首に痛みや違和感を感じたことはありませんか?
手首に異常を感じる場合は、もしかすると 腱鞘炎のため手首 が痛いのかもしれません。腱鞘炎という病気は手首にかぎったものではありません。しかし頻度としては手首にみられることが多いので、手首におこる代表的な病気のひとつといわれています。
 
この記事では、手首に生じた腱鞘炎の原因やメカニズム、症状、自宅でできる簡単なセフルケアの方法についてご紹介します。
 
 

そもそも腱鞘炎とは

 
腱鞘炎(けんしょうえん)という病名を聞いたことがある方は多いと思います。一般的にも、腱鞘炎と聞くと手首の病気というイメージがありますね。
 
腱鞘炎を知っているけれど、実際のところ私たちの手首ではどんなことがおこっているのか、病気の実態や病気がおこる過程(メカニズム)について詳しく知らないという方は多いのではないでしょうか?
 
体の構造についてある程度の知識があると腱鞘炎についての理解がとても深まります。そこで、ここではからだのつくりについて簡単に説明しましょう。
 
※ここでは、手のつくりについてこの記事のテーマである「手首の腱鞘炎」に関係した、ところだけをピックアップして、わかりやすくご紹介します。
 
 
腱鞘炎とは、文字どおり腱鞘という場所におこる炎症です。
 
腱鞘はからだのいろいろな場所にありますが、おもには手・手の指といった場所によくみられる組織です。
からだをうごかすためには関節と筋肉が必要です。関節そのものは、うごくつくりになっています。でも実際にうごかすためには筋肉が伸びたり縮んだりすることが必要です。
 
筋肉のぷっくりと膨れていてる中心部分は「筋腹(きんぷく)」、筋状に細くなっていて骨についている部分は「腱(けん)」と呼びます。関節がうごくと腱が骨から浮き上がってしまうので、それを防ぐために腱鞘というベルト状の幅のある組織が腱と骨を包んでいるのです。
 
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、釣り竿をイメージしてみてください。釣り竿はカーボンなどでできた竿の部分と、それを通すリングがついています。そのリングのなかを釣り糸がとおるしくみになっています。
 
リングがあるから釣り糸が垂れることなく釣り竿の先端までいくことができます。そしてリングと釣り糸にはある程度すき間があるのでスルスルとスムーズにうごくので途中でひっかかることはありません。ここで釣り竿は「骨」、釣り糸は「腱」、そしてリングが「腱鞘」にたとえられます。
 
腱鞘は筋肉の腱がたるんだりすることを防ぎ、関節のうごきに合わせて筋肉がスムーズにうごけるための大切なはたらきをしているのです。
 
 

腱鞘炎で手首が痛くなるメカニズムと原因

 
腱鞘炎のなかでも手首におこるものをとくに「ドケルバン病」といいます。スイスの医師であるフリッツ・ド・ケルバン(Fritz de Quervain)氏がはじめて報告したために「ドケルバン病」とよばれるようになりました。別名「狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)」ともいいます。
 
腱鞘が何かのきっかけで炎症がおこり狭くなってスムーズにうごけなくなるのが病気の実態になります。釣り竿にあるリングがサビたり、ゆがんだりして釣り糸がひっかかるようなイメージです。
 
手首の腱鞘炎がおこる原因にはいくつもの要因が考えられていて「これが原因」とひとつに特定できないことが多いとされます。パソコンのタイピング動作を頻繁におこなう方、漫画家、作家、子育てや家事が忙しい女性などに多いことから手をつかう頻度が多いことが原因で炎症が生じると考えられています。
 
過度に手首を使うと、筋肉が緊張する、血行がわるくなる、腱と腱鞘の間で起こる摩擦によりダメージを受ける等の理由で、組織が傷ついて炎症が生じます。この炎症が引き起こす腫れや老廃物の蓄積などによって手首のスムーズなうごきを妨げてしまうのです。
 
 

腱鞘炎で手首 が痛くなるのは、どんな動作や状態が原因?

 
手首に生じる腱鞘炎の症状でもっとも多いのが「手首の痛み」だといわれています。突然つよい痛みがでるという方もいますが、一般には段階的に症状が進んでいくことが多いものです。
 
5つのレベルにわけて、段階的に症状の進み方をみてみましょう。
 
1.痛みは感じないこともあり、手首や腕のだるさを感じたり、指を開くときに違和感を感じる状態です。この段階で医療機関を受診する人は少ないようです。
 
2.瞬間的に痛みがでたり、手を使った動作をしているときなどに不快に感じたりします。ただし、どこが痛いのか漠然としていて特定出来ない状態です。この段階でも医療機関を受診する人は少ないようです。
 
3.手を使った動作をおこなったあと、動作をやめても痛みがおさまらず、痛みが数日間つづきます。手首を押してみると、痛みがでる箇所などがはっきりしはじめる状態です。この段階で、異常を自覚し病院にかかる方が多くなるようです。
 
4.生活のなかで痛みを感じる頻度がふえ、衝撃などを加えるとズキッとした痛みが走ることもあります。そのままだと痛みなどに不安があったり、生活に支障があるので、テーピングやサポーターといった装具などが必要となる状態です。
 
5.うごきに関わらず痛みが生じ、安静にしているときでも痛みに苦しむことがあります。炎症も悪化し、後述する医療としての「安静」(動かないように器具で患部を固定等)をすすめられたり、最終的には手術が検討される状態です。
 
 
一概にこのとおりに病状が進むわけではありません。ここで示した段階は、腱鞘炎が進行する一つの目安として捉えて頂ければと思います。
特に1で述べた違和感は手首の腱鞘炎の重要な兆候です。この時点で受診する方は少ないと思いますが、腱鞘炎について知識をもっていれば、手首に負担がかからないように心がけることはできます。このような注意により、腱鞘炎の進行をある程度予防できる可能性があります。
 
 

手首の腱鞘炎の自己チェック法

 
手首の腱鞘炎を自己チェックする簡単なやり方があります。簡単といっても病院の診断で医師がおこなう診察としても使用されるもので、信頼性は高いといわれるものです。
 
手順1. 親指を包みこむようにして拳をにぎります。
手順2. 拳をにぎったまま、手首を小指側へ倒します。

 
この時点で手首の痛みがでるようであれば手首の腱鞘炎(ドケルバン病)の可能性があります。ちなみにこの方法は、医学の診断で用いられる「フィンケルシュタインテスト」という検査方法を応用したものです。また手首のちょうど背中側をおさえてみて痛みや腫れを感じた場合は、手首に腱鞘炎が起きている可能性はより高いと考えられます。
 
 

腱鞘炎の治療

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この項では、腱鞘炎の主要な治療法について説明します;

安静

安静というとただじっとしているだけで、治療法ではないようなイメージがありますが、ここで意味する事は、もっと積極的な意味です。具体的には、腱鞘炎となっている手首等を動かさないという事に加えて、①サポーターを用いる、②シーネ固定を行う等です。シーネ固定とは、金属や木で出来た器具を炎症部分にあてて、動かないようにしっかり固定することです。特定箇所の酷使が原因となる腱鞘炎においては、動かさないように処置することは重要な治療法なのです。
 

物理療法

物理療法とは、温める、冷やす、電気で刺激を与える等により、①筋肉を弛緩させる、②こわばった組織を柔軟にする、③痛みに関係している神経の興奮を抑制する、④血流を改善し炎症を軽減する等を行う治療です。
 

薬物療法

腱鞘炎の主要な症状である痛みを緩和する鎮痛剤、湿布薬、塗り薬が処方されます。また炎症、痛みを抑えるために、ステロイド剤を注射する事もあります。
 

手術

 
他の治療法で回復しない場合や何度も腱鞘炎になってしまう場合に、手術が行われることがあります。通常は、腱の動きに支障がある部分の腱鞘を切開し、動きやすくします。
 
 

腱鞘炎の予防法とは

 
手を長時間酷使する職業の方、スマホを長時間利用している方、家事・育児に関わる時間が長い方、高齢者、手の血行が良くない人については、腱鞘炎になる確率が高く、一旦治療して治ってもまた再発してしまうことがあります。
 
既に少しだるさを感じる程度の弱い症状がでている方も含めて、セルフケアをおこなうことで予防、再発防止、悪化防止に効果があります。
 
この項では、予防に役立つ自宅でできるセルフケアのやり方を3つご紹介します。
 
その1. 冷やす
手首を使ったあとに痛み、熱感、だるさ、腫れなどを感じるときには炎症がおこっています。炎症は冷やすことで症状を和らげることができます。保冷剤やアイスノン、あるいは100円ショップなどでも購入できるアイスバッグなどを利用して15〜20分程度患部を冷やします。直接皮膚にあてると凍傷になる恐れがあるので、タオルなどで包んで使用しましょう。
 
 
その2. ストレッチ
ストレッチには、血行をよくする効果、組織と組織がくっついてしまうことを防ぐ効果があり、関節のうごきをスムーズにすることが期待できます。ストレッチには以下の2つのやり方があります。ストレッチはつよくせずにマイルドにおこないます。またやってみて症状がつよくなるのであれば、すぐに中止してください。
 
・ストレッチ1
親指を外にうごかす筋肉をストレッチします。指は自然に開いたまま、手首を反らせて小指側に倒します。その状態で反対側の手の指を使って親指を手の平にくっつけるようにゆっくりとおさえます。15秒くらいキープします。
 
・ストレッチ2
親指を反らせる筋肉をストレッチします。親指を伸ばしたまま、反対の手で親指を握ります。その状態で親指をゆっくり手のひら側に向けて曲げていきます。15秒くらいキープします。このとき手首には力を入れないでリラックスしておきましょう。
 
 
その3. 手首の固定
手首を固定するのにテーピングなどもありますが、やや専門的な知識が必要になりますし、取り外しのことを考えるとテーピングよりサポーターなどがよいでしょう。サポーターは通販、ドラッグストアでも購入でき価格も手頃なものが豊富にあります。固定性に優れたもの、肌に優しくムレにくい素材でできたものを選ぶのがポイントです。
 
 

まとめ

 
腱鞘炎という病気の概要とセルフケアについてご紹介しました。症状がひどくなければ、ご自分でしっかり管理することも大切です。ただセルフケアには限界があることを理解しておきましょう。
 
痛みがどんどんつよくなる、じっとしていても痛いというのであれば、専門的な治療が必要です。そういったときはセルフケアにこだわりすぎず、きちんと医療機関でみてもらうようにしましょう。

 
 
【参考文献】
*日本整形外科学会・「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」(https://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/de_quervain_disease.html 2016年7月閲覧)
*古東整形外科・ドケルバン病(http://kotoseikeigeka.life.coocan.jp/12dequervain.htm 2016年7月閲覧)
*日本形成外科学会・狭窄性腱鞘炎(http://www.jsprs.or.jp/member/disease/extremities_malformation/extremities_malformation_06.html 2016年7月閲覧)
*整形外科リハビリテーション学会(編):関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹・
改訂第2版. メジカルビュー社. 2014
*金子丑之助(著):日本人体解剖学 (上巻)・改訂19版. 南山堂. 1999
 
 
<執筆者プロフィール>
森 ジュンヤ(もり・じゅんや)
理学療法士国家資格取得。急性期総合病院、回復期リハビリ専門病院、訪問看護ステーションにて臨床経験を経る(現在10年目)。専門分野は保健衛生分野。現在は医療関連記事、動物臨床医学、保健衛生学についての執筆を行う。
 
 

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